仕事で伸び悩んでいた私にとって、簿記1級合格は人生の大きな転機となりました。
理系出身なので簿記の勉強は畑違い、0からのスタートではありましたが、一念発起し「簿記1級独学合格プロジェクト」と名づけ真剣に取り組みました。
その結果、独学で350時間・6ヶ月と最短の勉強時間で効率よく合格出来ました。
ここではおすすめの簿記1級テキスト、問題集、過去問を使って行った半年間の具体的な勉強方法についてまとめていきます。
なお本記事は簿記1級独学合格シリーズの戦略とスケジュール編に相当する記事です。簿記2級の記事や、簿記1級の勉強法記事も併せてお読みいただくとわかりやすいです。
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簿記1級テキストで勉強する前に、自分の状態を把握する
最短ルートで独学合格するためには緻密な戦略が不可欠です。
テキストで勉強する前に、先ずは勉強開始時点の自分の状態を把握することが有効です。参考に、私が簿記1級の勉強を開始した時点の環境および諸条件をご紹介します。
仕事の状況
- IT業界でシステムエンジニアとして働いていた
- 比較的仕事が落ち着いていた(平均すると仕事時間は9:00~20:00)
- 仕事で伸び悩みを感じており、どうにかして打開したいという危機感に駆られていた(資格取得へのモチベーションがMAXの状態)
簿記レベルの状況
- ゼロから簿記の勉強を開始して3か月が経過
- 簿記2級を受験して自己採点80点であり、恐らく簿記2級に合格できたと思われる状況(結果がわかるのは1か月後)
簿記1級試験までの残り時間
- 現在は、簿記2級試験(秋試験)が終了した直後の11月末
- 翌年6月の簿記1級試験を受験予定
残された時間は約6か月!
以上のように、自分の置かれた状況を一度書き出してみることがスケジュールを立てる上で役立ちました。自分を客観的に見ることが出来ます。状況を整理する際には多少主観が混ざっていても構いません。
私の場合は比較的仕事が落ち着いていたことと、自分の簿記のレベルを勘案して、簿記2級の合格すら決まっていないタイミングでしたが、仮に2級に落ちていたとしても1級の勉強開始レベルとしては十分であろうと判断しました。
自分の状況を書き出し、この判断を出来たことが重要でした。
簿記1級試験までに残された時間を把握して、テキストや問題集の進め方を決める
ステップ①の条件を踏まえ、私は自分の状況を以下の通りと判断しました。
- 簿記2級合格レベル相当なのでスタートラインの実力としては十分
- 簿記1級の試験までは半年なので時間がない。勉強時間よりも質を重視した勉強を行わなければ到底間に合わない。
計画の立て方には、全体のタスクを順に詳細化するトップダウン・アプローチと、細かいタスクを洗い出して積み上げるボトムアップ・アプローチがあります。参考記事はこちら
この時の私は本試験まであと6ヶ月でしたので、それに間に合わせる全体スケジュールを立てるしかなく、トップダウン・アプローチ的な視点からスタートするほかありませんでした。
簿記1級の勉強に必要となる工程(テキスト・問題集・過去問)を洗い出す
6ヶ月で仕上げるためには逆算して各月のスケジュールを立てる必要があります。
資格試験の受験自体には私は慣れていたので、まずは以下のような工程で進めることを考えました。
- テキストのインプット学習
- 問題集を使ったアウトプット学習
- 過去問による実戦レベルまでのブラッシュアップ
- 予想問題集や模擬試験を解くことによるプラスアルファの備え
調べてみると、簿記1級では特に以下の点が重要であることが分かりました。
- 基本を身に着けていること(本試験では傾斜配点の制度があり、皆が解ける問題を落とすと命取りです)
- 過去問を徹底的に解いていること
従って、①のインプット学習と③の過去問については十分な時間をとる必要があると考えました。
簿記1級勉強の現実的な月単位のスケジュールを立てる
自分に残された時間と、合格までに必要な工程を洗い出したところで、次は月単位のスケジュールを立てます。
暫定プランを作成
ここで私はまずは以下の通り、各工程に費やす時間を割り当ててみました。
学習 | 期間 |
テキストを用いたインプット学習 | 4ヶ月 |
問題集を用いたアウトプット学習 | 2ヶ月 |
過去問 | 2ヶ月 |
予想問題集(模擬試験も受ける) | 1ヶ月 |
しかし上記では9ヶ月掛かってしまい、本試験に間に合いません。
何とかして3ヶ月分を削る必要があります。
やらない項目を決める
私が注目したのは、以下の二点でした。
- インプット学習期間の短縮
- アウトプット学習の工程を省略
こちらの記事にも記載している通り、市販のテキストのレベルは高く、インプット学習のテキストと言えども問題は十分についています。
アウトプット学習については過去問で代替できると判断し、邪道だとは思いましたが問題集を用いたアウトプット学習の工程を思い切って省略しました。
また、インプット学習で4ヶ月費やしてしまうと、残り2ヶ月で過去問と予想問題を解きつつ直前の仕上げをしなければなりません。
私は大学受験や他の資格試験の経験から、過去問は一気に自分の実力を高めてくれると知っていましたが、十分な時間が必要だ、とも考えていました。
簿記2級を受験直後とは言え、初めて簿記の勉強に触れて3ヶ月のビギナーである私には、過去問等を2ヶ月でこなすことは現実的ではありませんでした。
また、アウトプット学習である過去問で間違えた点をテキストに立ち戻って復習するほうが、時間効率も記憶の定着が良いと言えます。効率の観点ではアウトプット学習に重点を置方がインプット学習よりも良いということです。
上記を踏まえて、念入りなインプット学習は避けることにしました。
簿記1級の勉強で何が必要かを判断する
「何をするべきか」よりも「何をしないか」を決めた結果、以下の通りの方針で取り組む案に変更となりました。
学習 | 期間 |
テキストを用いたインプット学習 | 3ヶ月 |
過去問 | 2ヶ月 |
予想問題集(模擬試験も受ける) | 1ヶ月 |
これで何とか6ヶ月となり、机上の空論とは言えど本試験に間に合う形となりました。
しかしながら、特に大きな懸念として以下が残っていました。
- インプット学習は2周行いたいが3ヶ月でできるか
- 過去問も全問正解できるようになりたいが2ヶ月でできるか
おすすめの簿記1級テキストと進め方
私が用いたテキスト4冊でしたが、ページ数のボリュームとしては
- 商業簿記・会計学(商会) : 約700ページ
- 工業簿記・原価計算(工原) : 約700ページ
でした。
商会と工原を毎日10ページずつ進めれば、12P × 60日(2ヶ月)= 700ページ で一周できることになります。
急な用事で毎日勉強できるとは限らないという点も考慮して、毎日14ページずつ進めれば50日で終えられますので、10日の余裕枠ができます。
従って、1周目は毎日、商会と工原をそれぞれ14ページ(プラスアルファ)ずつ進めることを目安にしました。
毎日の勉強時間を商会と工原に1時間ずつあてたとすると、商会も工原も60分で14ページ(4〜5分で1ページ)進める計算となります。
これなら、2ヶ月で商会と工原を1周(各700ページ)することができます。
相当に集中力が必要となりますが、簿記2級の知識が新鮮な状況でしたので「やれるかどうか」よりも「やるんだ」という思いで取り組むことにしました。
また、テキスト学習の2周目は、一周目と比べて2倍のスピードで取り組むこととしました。2周目なので、1ヶ月で商会と工原(各700ページ)を1周するスピードです。
これは一字一句読んでいては到達できないスピードです。
一周目で残した走り書きのメモを記憶にフラッシュバックさせて蘇らせるというイメージで進める方針としました。
これで、3ヶ月でインプット学習をテキスト二周分できるという机上の計算は立ちました。
尚、テキストだけでそのまま過去問に進んでも良いと思いますが、試験までの期間に余裕があるのであれば、とおるトレーニングについても勉強されることをおすすめします。
特に商業簿記については、特殊商品売買や建設業会計、そしてIFRSに関連した包括利益計算書等の論点について触れられているので、じっくり勉強しておくことは有益だと思います。
とおるトレーニングまで取り組むとなると、テキストのボリュームは商業簿記会計学、工業簿記原価計算がともに1400ページ程になるため、正直、私が受験した時よりも内容のレベルは高くなっているように思います。
おすすめの簿記1級予想問題集と進め方
私が用いる予定だった過去問題集は、当時の内容では過去14回分が掲載されていました。
簿記1級は1年に2回開催されるので、過去7年分のボリュームということです。
本試験では商会、工原ともに90分ずつかけて解きます。つまり、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目を45分ずつ掛けて解く計算になります。
簿記1級の試験は合格者でも時間は目一杯使い切ると聞いていましたので、インプット学習が終わったばかりの私は45分では足りないと判断し、各科目を60分ずつ掛けて解く前提としました。
私は1日の勉強時間が(商業簿記・会計学)、(工業簿記・原価計算)それぞれ60分の計2時間ですので、4科目分ある過去問1回を解くのには2日掛かります。
2日で1回分の過去問を解くことが出来るので、2ヶ月(=60日)かければ、30回分解けることになりますので、2周プラスアルファ回せる計算となります。
強引ではありますが、この様に仮定を置いた上で、行けると判断して進めることとしました。
簿記1級勉強の全体スケジュールを立て、テキストと過去問での学習を開始する
全体スケジュールは以下の通りです。
- 勉強期間は12月から翌年5月末までの6ヶ月間
- 本試験は6月上旬に開催
- 合格発表は7月末頃
最初のポイントは2月末までにテキストを終わらせられるかということでした。
12月後半に簿記2級の合格の知らせがあったことでモチベーションが高まり、序盤は順調に進みました。
しかし、2月のインプット学習(テキスト)の追い込み、3月・4月の過去問の時期は、難易度の高い箇所でしたので中々思うように問題が解けませんでした。
この時期はブログにて学習内容や間違った箇所を整理したり、他の受験生の方々と励まし合ったりして諦めずに継続することができました。
1~3ヶ月目:テキストを用いたインプット学習
次からはテキストを用いた具体的なインプット学習について、解説していきます。
進捗管理について
その他工夫点について
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また、1日の学習時間である60分の使い方の内訳は以下の通りとしました。
①最初の5分で昨日の1時間の勉強内容を高速復習
時間をかける必要はありません。ささっと走馬灯のように記憶を呼び起こすだけで良いです。
②50分で本日の学習内容を実施
ここがメインの学習となります。集中して予定していたページまで進めます。
わからない箇所は悩みすぎないようにした方が良いです。
③残りの5分で本日の学習内容を高速復習
今日学んだことを復習します。
エビングハウスの忘却曲線という記憶のメカニズムを逆手に取った方法で、繰り返すことで記憶の定着を強化しています。
上記で同じ項目を3回できるため、記憶定着の向上が期待できます。
4~5ヶ月目:過去問による実践レベルへの到達
1~3ヶ月の間で、テキストを2周し基礎をしっかり固めました。4ヶ月目から重要なことは基礎的な分野における弱点をなくすことです。
そのために、過去問を繰り返し解き、実践レベルへ到達させます。
簿記1級では傾斜配点の制度があり、皆が解けた問題の配点を高くする形で得点調整が行われます。
弱点をなくすために重要なことは以下の通りシンプルです。
- 確信を持って高得点を取れた問題は何度も解かない
- それ以外の問題についてテキストで基礎を復習して再度解く
上記を徹底するために、私は以下のルールで進めました。
60%(25点満点の15点)以上得点できた問題は再度解く優先度を下げる
具体的には以下の様なエクセルファイルを用いて過去問の理解状況を管理しました。
ポイントは以下の通りです。
- 過去問題集にて重要扱いされていた回は、エクセル左欄外に「重要」と書き優先的に解く
- 25点満点の15点(60%)を下回った問題は赤点扱いとして赤文字にする
- 赤点となった論点はテキストで復習して理解した上でリトライする
このExcelやPDFファイルはプリントアウトして持ち歩くのも役に立ちました。友人にも紹介ましたが、みんな使ってくれました。
ファイルは以下にありますので、必要に応じてダウンロードしてください。
簿記1級問題集で総仕上げ
予想問題集への取り組みは過去問と同様に進めます。25点満点中15点以下の場合は再テストです。
弱点をなくすことを最優先にし、間違えた問題はテキストを復習して再度トライする、の繰り返しです。
テキスト、過去問はネットスクールが出版しているとおる簿記シリーズを使用していましたので、過去問は老舗のTACにすることで、様々な傾向を網羅しようとしました。
最新の法改正にもしっかり対応されており、13年連続NO1ということで選択しましたが、使いやすかったです。
以上が、6ヶ月で簿記1級独学合格のための戦略と勉強方法でした。
合格率が1桁台の試験でしたが、以上のやり方で無事一発合格することができました。
簿記1級の独学が不安な場合は、オンライン講座がおススメ
完全独学だと、勉強時間を確保しモチベーション維持に大変な面もあります。
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私が完全独学で大変だと感じたのは、法改定の度に自分で調べないといけない、勉強中このやり方でいいのか途中で不安になる、などでした。
テキストや試験の傾向を自分でキャッチアップするのは面倒、仕事で忙しく時間をとれない、という方におすすめです。
こちらの独学道場は、時間や内容が通常のTACの通信講座よりコンパクト設定されているので、テキストが自分に合っているかどうか、本屋さん等で確かめて決めるとよいかと思います。におすすめです。
具体的な1日の過ごし方や、かかった費用については以下の記事もご参考になさってください。