勉強/仕事を問わず、記憶するという作業がつきまとう現在ですが、「覚えるのが苦手」と思っていらっしゃる方は多いと思います。
かく言う私も中学の頃から暗記系の科目は特に苦手でした。
数学は流れを理解すれば応用をきかせられるため得意だったのですが、暗記科目の代表である地理に関しては私自身の興味が低かったことも手伝い、完全に苦手意識を持ってました。
大学を卒業するまでは勉強が本業のため、時間を掛けて力技で書いて書きまくって覚えるというアプローチで何とか対応できましたが、社会人になって限られた時間で勉強する様になってからは、この力技の方法は使いづらくなりました。
何とかせねば、と、記憶のメカニズムを理解して効率を高める方法を探した結果、記憶の特徴を利用すれば記憶のコスパを良くできることが分かりました。
以降の方法を用いて、私は簿記1級の資格等を取得したり、転職後に新しい業務を短期間で習熟するために活用することができました。
覚えられない!とお悩みの皆さまも、ご参考にしてください。
エピソード記憶と意味記憶
記憶の種類にはエピソード記憶と意味記憶という2つの種類に分けることができ、以下のような特徴があります。
エピソード記憶: 意味記憶: |
大学受験までのいわゆる受験勉強においては意味記憶が主流になりますので、努力や反復によって覚えることとなります。
中には、語呂合わせによって「知識をストーリー(エピソード)化」することで簡単に覚えることができたりしますが、習得したい知識を一つ一つ語呂を考えるのは単純に覚えこむ以上に時間が掛かりそうです。
意味記憶を定着させるためには、記憶のメカニズムを把握した上で工夫する必要があります。
エビングハウスの忘却曲線
心理学者のヘルマン・エビングハウスが提唱した中長期記憶の忘却に関するメカニズムとして有名なものに、エビングハウスの忘却曲線という概念があります。
ここで提唱されている記憶の特徴を逆手に取ることで、限られた時間で最大限に学習効果を高める工夫が可能です。
エビングハウスの忘却曲線が意味するポイントとしては以下の通りです。
①人間は覚えたことはすぐに忘れる
以下の通り、必死になって記憶したとしても、勉強した20分後には残念ながら忘却が開始しているという結果になりました。
- 20分後には約40%を忘却
- 1時間後には約55%を忘却
- 1日後には約75%を忘却
- その後忘却ペースは緩まり、1ヵ月後には約80%を忘却
悲しいですが、これが現実です。
②その後再び学習しなおせば、忘れかたもマシになる(記憶の定着率が高まる)
1回目だと上記の通り1ヶ月経つと20%くらいしか定着していませんが、5回くらい再学習すると自分の問題集を解いた際の感覚としては、8割程度は定着しているように思います。
つまり、人は忘れる生き物だということです。
学んだ1時間後には既に半分以上忘却しているので、物覚えが悪いのは決して私達の頭が悪いのではありません。
②の再学習を適切なタイミングで数多くこなせるか、がポイントになります。
アウトプットすることでインプット学習の効率を更に高める
何度も繰り返しインプットすることで覚えていけますが、更に効率を高めるのであれば、インプット学習の際に併せてアウトプットを行うのが有効です。
ただ読むだけではなく、以下のような方法でアウトプットすることができます。
アウトプット学習の方法
方法① 紙にひたすら書く
単純ですが「書く」という行為はアウトプット学習の筆頭です。
「書いて覚えよう」とアドバイスしてくれる方は多いと思いますが、皆がアドバイスしてくれるということはそれだけ効果があるということの裏返しです。
ただし、文字通り手を動かすという努力を要しますが、成果は努力の量に比例します。
黙読するよりも音読する方が疲れますが学習効果がありますし、音読よりも手を動かして書くほうが更に効果があります。
壁を越えて向こう側に行くための、シンプルではありますがもっとも効果の高い方法です。
方法② 自分の仮想生徒をイメージし、説明することで自分が学習する
他人に何かを説明できるためには、教師や専門家のように一定のレベルに達している必要があります。
それを逆手に取り、「誰かに教える」ということを演じることで、自分がアウトプットする立場に強制的に立ち、経験値を積むというアプローチです。
この時の仮想生徒は、
- 大切な家族
- 愛しい恋人
- 気になるあの人
- 二次元の彼女
でも誰でも良いです。
そして、その仮想生徒は何も知らないド素人という前提で、自分が学びたての知識を教えていくのです。
「教える」といっても、ホワイトボードを用意したりする必要はなく、つぶやく程度で結構です。
ド素人に教えるということは、その知識が
- 何のために使われるもので
- どのような仕組みになっていて
- どのような効果、結果が想定されるのか
について説明できないといけません。
家庭教師等、実際に生徒がいると責任も重大ですが、自分の脳内の仮想生徒であれば、途中で説明がぐだぐだになっても心配はありません。
何度も繰り返すことで説明能力も徐々に上達してきますので、仕事にも役立てることが期待できるお得な方法だと思います。
プレゼンテーションのイメージトレーニングに近いものがあるかもしれません。
方法③ 情報を整理して既知の知識と絡める
ある程度他の分野の知識が積みあがっている人が対象となりますが、学ぶ際に情報を頭の中で整理して今知っていることと絡めることで、少ない労力で習得することができます。
例えば、スマートフォンでiPhoneにある程度精通している状態でAndroidについて学ぶのであれば、iOSの特徴を頭に描きながら、Androidで留意すべき点を比較することで劇的に習得の効率を改善できます。
この時に、iOSを操作したときの情景やストーリーを絡める工夫をすることで、エピソード記憶として定着しやすい情報に加工することも有効です。
以上のように、単純にインプットとして読むだけでなく、アウトプット作業を繰り返す過程で様々な観点で情報を加工することで理解が深まると思います。
ケーススタディとして資格試験で効率的記憶法を実践した結果
私が簿記1級と中小始業診断士を独学していた際には、1日1時間の勉強枠を以下のように分けることで、同じ知識を2回復習できるようにしていました。
効率的記憶法の為の時間配分
①最初の5分で昨日の1時間の勉強内容を高速復習
だらだらと時間をかける必要はありません。
ささっと走馬灯のように記憶を呼び起こすだけで私は効果がありました
※ちなみに、私は「シナプスに電気を通す」と自分用語を作って表現しています。
②50分で本日の学習内容を実施
③残りの5分で本日の学習内容を高速復習
これにより、ひとつの箇所を3回学習できるので、記憶の定着率が変わってきます。
前述の通り、私の感覚では一つの箇所を5回学ぶことで8割がた記憶が定着しますが、問題集を解いていれば、あと2回くらいは直ぐに再学習の機会があります。
もしくは、テキストを2周すれば、計6回学習できることになりますので、2周目以降の学習が本当に楽になります。
ここまでくればインプット学習の仕上がりとしては十分です。
次のステップである、問題集を解くアウトプット学習でより質の高い学習をすることができます。
上記の方針を採用することで、私は簿記1級を半年で、中小企業診断士は今までに身に着けた知識・経験を活かすことで少ない勉強時間で合格することが出来ました。
時間のない社会人だからこそ都合が良い
エビングハウスの忘却曲線から考えられる学習方法は、少し時間を空けて復習を繰り返すというスタンスです。
従って、3時間ぶっ通しで学習するよりも、30分を4回繰り返した計2時間の学習の方が効果が高いこともある、というのが私が実践した中で得られた感触です。
つまり、時間の限られた社会人向けの勉強法として適していると思います。
時間が限られた中で集中することで、むしろ仕事と勉強が相互に気分転換となり、更に良い結果となるかもしれません。
私はシステムエンジニアから会計コンサルタントへの転職、というキャリアチェンジを経験してますが、新しい職場で知識を習得する際にもこの方法を活用しました。
朝出社したら昨日の業務内容をさっと復習し、夜帰る前に当日の内容を復習することで、1つの内容を3回学ぶことができます。
実務経験が積み重ねれば、そのときの仕事の状況や取り巻く人々といったエピソード記憶とも絡めて更に覚えやすくなるのですが、実務経験の浅いうちは、上記の通り繰り返し回数を多くすることに注力しましょう。
時間効率を最大限に高め、生み出された余暇で別の活動をできれば、時間を複利で運用している状態に到達できます。
全ての活動は複利の作用を持っており、継続すれば加速度的に差が生まれます。
是非ともその第一歩を踏み出して頂ければ幸いです。
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